先日、質問を頂きました魚の保存(保冷)方法について、簡単にご説明したいと思います。

まず、保冷の目的ですが、それは「鮮度の維持」にあります。
(釣りにおいて)
鮮度とは、魚の身の状態を釣れた時のまま、いかに長く保てているのかという事が重要です。

実際に、魚の保冷方法を説明する前に、予備知識として説明が必要な事があります。
それは、魚の身の状態の変化についてです。

一般的に、魚の身の状態といったら「新鮮」「腐っている」という位しかイメージできないかもしれませんが(笑)、身の状態は、釣りあげて絶命した段階から刻一刻と動的に変化していきます。

魚(というより生き物)は、絶命後、しばらくすると死後硬直が発生します。
生き物や環境によって、死後硬直までの時間は違うかもしれませんが、魚類では1時間前後かそれ以下でしょう。
そして、この死後硬直が解けると、魚の体の中に含まれる「消化酵素」の働きによって、たんぱく質(筋繊維)が徐々に分解されていきます。この時、たんぱく質が旨味成分であるアミノ酸に変化していくため、この過程を最近では「熟成」と言っています。
この段階で、身の筋繊維がどんどん分解されていくため、釣りたての歯ごたえなどは失われていき、柔らかく、ねっとりとした触感に変化していくのです。

しかし、この死後硬直以降の分解の過程において、管理が悪いと腐敗菌(細菌)が増殖してしまい、「痛む」あるいは「腐る」という状態になってしまいます。

また、これら細菌の働きによって、ヒスタミンと言われる物質が生成されてしまい、それを食べる事で、よく言われるヒスタミン中毒といわれる食中毒が起きてしまうのです。

そこで、魚の鮮度を維持するために保冷というものが必要です。
保冷において重要なポイントは、魚を摂氏0℃近い温度まで完全に冷却することです。
そうする事によって、魚の死後硬直が解けるまでの時間を延長することができ、同時に細菌などの増殖を防ぐ事が可能になります。

上述したように、魚の身の状態が変化していくのは基本的に死後硬直以降ですので、それまでの時間を延ばせれば、新鮮な身の状態を維持できます。
また、十分に冷却できれば細菌の活動も著しく低下しますので、身に腐敗菌が回りヒスタミンが生成される事を防止できます。

※余談ですが、神経締めも死後硬直までの時間を延長するために行うものです。
そのため、
神経締めを行ったからといって味が良くなったり、氷が不要になったりはしません。

では、具体的な保冷の手順を説明していきます。
1.十分な砕氷を使う
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2.海水をひたひたになるまで入れる
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3.血抜きした魚を投入
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※釣り上げた後、魚をバケツなどに放置しないこと。即座に処理し氷水に投入する。

たったこれだけの事です。
通常と何が違うかと言えば、『砕氷』を使う事です。

一般的には、コンビニなどで売っている板氷などをよく使われるかと思います。
しかし、板氷では表面積が小さく、海水を入れたとしても水温を十分に冷却する事ができません。
せいぜい、冷たいなと感じる程度の温度が限界の上、クーラーボックス内の温度を均一に下げる事が出来なくなります。(保冷剤や、凍らせたペットボトルなどは論外です)
それでも、冬場や家が近い時などは、まだ良いですが、夏場の前後の時期でそれをやってしまうと、魚の鮮度を維持する事は難しくなります。
何より、温度を十分に下げれないと、細菌の増殖を許してしまう可能性があるため、ヒスタミン中毒のリスクを増やしてしまいます。

特に、サバやサワラは、消化酵素の働きが強く、腐敗菌も周り易いので、釣ったまま高い温度環境下に置いておくと、すぐに痛んでしまいます(;^ω^)

そこで、砕氷です。
砕氷は、表面積が大きく、海水を併せて用いた場合、手を入れている事ができないほどの水温まで冷却する事ができます。
この水温で、魚を保存すると、魚種とクーラーボックスの性能にもよりますが、1日程度は釣りたての状態を維持することができます。何より、細菌の増殖を防ぐ事ができますので、青魚であったとしても安心して、食べる事ができるようになります。

氷の入手については、コンビニなどに売られているロックアイスを使うか、ブロック氷を砕いて使うだけでもだいぶ良くなります。
また、どこでもというわけではないですが、大きめの漁港であれば製氷所を持っている場合が多いので、そこで氷を購入できる場合もあります。
特に製氷所で買える場合は、格安で大量に購入できる場合がありますので、釣りの道中にある大型漁港などで確認してみて下さい(^_-)-☆


最後に。
長々書いてはいますが、結局のところ、表面積の大きな砕氷を使ってガチガチに魚を冷やそうね!ってだけの話です。(笑)
ごくごく簡単な話であるかと思います。
しかし、これだけの事で食中毒を起こすリスクは相当に減ります。
実際、自分も一般の方より遥かに多くの魚を食べてきましたが、同様の保冷方法で食中毒になったことは一度もありません。
もちろん、食中毒といっても、アニサキスや腸炎ビブリオなどは、保冷方法とは別の観点が必要になりますが、ヒスタミン中毒においては同様の方法で保冷すれば、そのリスクを避けることができます。

また、適切な状態で持ち帰る事が出来れば、昨今話題の『熟成』も完璧に行うことができます。
持ち帰った段階で、既に細菌が周った状態の魚を熟成させたら大変な事になりますので、そうゆう意味でも適切な保冷は重要です。


以上、保冷についての話でした(^^)/
読んで頂いている皆様が、美味しいお魚が食べれますように(笑)

それでは、また!